今日はオンコール
いつも遊びの話しか書いていないが,ボクは脳神経外科医のためキチンと仕事もしている.
土曜日は世間では休日だが,病院は休みではないことが多い.ボクの勤務する施設は,土曜日午後までは通常の診療が行われている.ボクら脳神経外科医は施設により時間外の診療体制が異なる.
今の施設では,平日夜間と土日はオンコール体制と言って,救急外来にきた患者さんを,当直医や救急医が診察し,脳卒中,頭部外傷など脳神経外科医の診察が必要な場合・入院が必要な場合に連絡をいれるシステムとなっている.救急外来にいるとよく分かるが,脳卒中・頭部外傷といった疾患は非常にメジャーな疾患であり1日に何人も患者さんが入院することは珍しくない.加えて外科医であるので,手術が必要なケースも存在する.脳神経外科領域の緊急手術は時間との闘いになる事が多く,数十分の遅れで患者さんが不幸な転帰になる場合も頻繁にある.よって,オンコール体制の施設でオンコールの医師は連絡があった場合に, 遅くとも30分程度で病院に到着 できるようにしてなければならない.必然的に病院から30分以内の範囲に居を構える事が多い.距離として30分ではなく,準備して移動して着替えてで30分なので意外と時間がない.そのような事情のため,オンコールの日は基本的にどこかに外出するといった事はできず,自宅・病院近辺で外食するのが精々である.偉くなった場合はオンコールの回数も少なくなる事が多いと思うが,ボクみたいに駆け出しの医師は1年のうち半分程度の時間をオンコールに割り当てられる事が多く(この辺は施設の勤務態勢・常勤医数による),どこかに外出できるオンコールフリーの休日は数える程度しか得られない.加えてオンコールとは言っても,病院側からしたら勤務ではないため,病院に呼び出されて診療しない場合は時間外手当も支給されない(雀の涙である拘束手当のみ).拘束されており自由な時間ではないのにお金はもらえない.なかなかシビアな世界である...
オンコールの日にできる事
オンコールの日と言ってもほとんど病院から連絡がないことも時々あるし,呼ばれるときは病院と自宅を10往復するような事もある.日によって様々だ.そして日中もなかなか仕事量が多い職種であるうえ,ストレスの非常に大きな科でもあるため休めるときにはしっかり休んでおかないと精神に不調を来してしまう.オンコールの日にできる事は限られているが,リフレッシュできるような事を探して皆それぞれオンコールを満喫していると思う.もちろん脳神経外科医の中には,休みが全くなくても毎日夜中に働いていも全くなんともなく,「仕事が生きがいです」みたいな仕事人が多いのも事実である.しかし多くの人間はそんなことはなく,どんなに元気そうな人でも働き続ければパフォーマンスは低下し,心身に不調を来すことは多くの研究で明らかになっている.休む事は非常に大切な事なのだ.
ボクのオンコールの日の過ごし方は
- 近隣の町まで自転車で出かけて簡単な買い物をする
- 病院からロードバイクで30分程度の半径でなるべく距離のあるコースを選びサイクリングで汗を流す
- 最寄りのTSUTAYAでビデオを借りてきて映画鑑賞(映画館は途中退出したくないので見に行かない)
- TSUTAYAでマンガを借りてきてマンガ三昧(場所をとり引っ越しが大変なので購入はしない)
- じっくり読書
- 自宅で勉強
- 普段はしないような料理に挑戦
上記のいずれかの組み合わせで過ごしている事が多い.
『花束みたいな恋をした』
今日は映画を見ることにした.菅田将暉x有村架純主演で話題を集めた作品だ.映画館で見ようと思っていたが,忙しく過ごしているうちにいつの間に映画が終幕になっており,いつの間にかレンタルDVDが発売となっていた.コロナで外出自粛が叫ばれているおかげか,TSUTAYAからレンタルセールのお知らせが届いていたため借りることにした.
本作は1つのカップルの恋愛関係を描く内容となっていた.2020年偶然カフェで再会した二人の過去を振り返る形式で物語はスタートする.マニアックな趣味・思考をもつ大学生の二人が偶然出会い,あまりにも考えが共通することですぐに恋に落ちた.大学時代の恋愛絶頂期が楽しく表現されている.大学卒業,その後趣味の創作活動でわずかな収入を得ていたが,徐々に作品の単価が下がっていった.ある日,約束のお金がもらえないことに反論したところクビになってしまう.「代わりはいくらでもいる」「競争するためには単価を下げなければならない」という現代の資本主義の縮図を表現しているようであった.生活するために就職活動を行い,毛嫌いしていたサラリーマンとなった男主人公.当初はあいた時間でゲームや創作活動をやると言っていたが,徐々に会社に染まっていき性格が変わっていく.女主人公は仕事をしながらも相変わらず趣味にを精を出していた.徐々に広がっていく二人の距離感を見事に描写している.女主人公の変化する「ネイルの色」,別れが近づくのを連想させる「チューリップの花」など色々な伏線もあり,作品に熱中させられた.「花束みたいな恋」が何を指すのか考えながら鑑賞していたがはっきりした答えは分からなかった.ボク的な解釈としては,出会いの時,あまりにも共通する趣味・思考で一気に盛り上がった,一番最初が一番盛り上がっていた恋愛というのを種・苗・つぼみのない花束という言葉で表現したのかなと思ったが,実際はどうだったのだろう.総じてとても熱中できた良作.時間があったらまた見てみたい.もっと伏線回収できるかも!