アメリカで実際に医療に従事している医師が,場面場面においていかに考え,そして行動しているかを綴っている.
アメリカの医療界を舞台としており,ボクらが日本で医療する際とは異なる問題点も多く叙述されている.
本書の一節として,「死刑に携わる医師」が登場するが非常に含蓄に富む内容であった.州医師会として死刑に医師が携わることを禁止しているが,それでも医師が携わらないと諸々不都合な点が出てくる.「自分がやらなければ他の人に声がかかりその人が同じ立場で迷うだけ」と協力している医師もいた.自分ならばどうするだろう.
「戦い」の章では,医師としての限界についての論述があった.同じ疾患の治療を同じように行っても経過は患者毎に様々である事は,医師ならば誰でも知っている.時には治療がうまくいっても患者が治らない,むしろ悪くなってしまったという自体は生じる.その際にどうするか.一節に「良い医師とは一つ大事なことを理解している人で,それは治療は医師のためではなく,患者のためだということ」という言葉が出てくる.我々は目の前の命を助けることを目的に仕事にしており,確かに実際に臨床の現場に目を向けると,この治療は患者のためになっているのだろうかと思うことは多々ある.よくなる可能性がない患者に,医療をし続けるのか,それは患者のためのためになっているのか考えさせられる含蓄に富んだ言葉だと感じる.
著者からのボクらに対するメッセージは以下.時として傲慢になりがちなボクら医師に対してよい助言となりそう.
「聞け」仕事以外の事を何か一つは聞くようにする.人にはそれぞれの物語がある.
「書け」何かを表現するためには書くことが重要.
「数えろ」医療において数が合わないことは様々なトラブルにつながる.常に数える習慣を
「不平を言うな」仕事をしていれば色々な不満があるが,それを病院のリーダーである医者が口にすることは周りをブルーな気持ちにさせる.不平を言っても得はない.
「変われ」変化を受け入れるところから何かが変わる.変化がないところには新たな事は生まれない.