ダイビング本数が増えてくると欲しくなるものがカメラである.ほとんどのダイバーはカメラやGoproなどを海中に持ち込んで,撮影を楽しんでいる.
陸上で使用しているカメラを海中に持ち込むためには,ハウジングという耐水ケースが必要である.一部カメラは単体で10mほど防水性能を有するものも存在するが,10m程度の耐水性能ではダイビングには不適である(ダイビングではレジャーダイビングでも40mまで潜水できる).よって基本的にはハウジングというケースを買わなければならない.ハウジングはどのカメラにも用意されているわけではなく,一部のカメラのみに存在する.自分のカメラのハウジングが存在しない場合には,ハウジングがあるカメラを買わなければならない.そしてハウジングは基本的に高価である(特にアルミ製のハウジング).カメラ本体よりも高い事が多い.
そんな中で,Sony rx100シリーズ用にはSonyから純正のハウジングが発売されている.嬉しいことに比較的安価である.多くのハウジングが20万前後することを考えると,3万円程度というのはバリュープライスである.
僕もダイビングで水中撮影を行うようになってからは,手持ちのRX100M5を海に沈めるためにSony純正のハウジングケースを購入した.陸上ではとてもキレイな写真を撮れるカメラであるが,海中ではどうなのだろうか.甚だ疑問であったが,水中撮影に関してはネットで検索しても圧倒的に情報量が少なく満足いく答えは得られなかったので,思い切って購入してみた.
このカメラのワイド端は換算24mmだ.陸上ではそれほど不便はない.しかし水中という環境は水という巨大なフィルターに囲まれている.光は屈折の影響を強く受けるため画角がかなり狭くなる.水中ワイド写真を撮りたいならばワイドコンバージョンレンズは必須だ.ワイドコンバージョンレンズはカメラ機材の中では比較的高価であるが,その効果は絶大だ.光を多く取り込むので写真は明るくなるし画角ははっきり違いがわかるくらい広がる.おすすめはINONのレンズだ.レンズが少し重いが,純正のハウジングとカメラだとプラス浮力のシステムのためレンズをつけるとちょうどよい重さとなる.
ワイドをとるときはドリフトとか泳ぎ回る事が多いので,この軽いシステムでキレイな写真が撮れるのはありがたい.
問題はマクロ側である.このカメラはワイド側ではレンズ前5cmほどまでよれるが,少しでもズームかけると途端に寄れなくなる性質を持つ.テレ側ではレンズ前30cmほどしか寄れず満足のいくマクロ写真は撮れない.冒頭のようなマクロ生物を撮影するには,クローズアップレンズという,寄るためのレンズを装着する必要がある.このレンズは装着すると大きく撮れるのではなく,装着すると撮影距離を短縮する(ピントが合う距離が被写体から近くなる)ことにより結果として大きくとれるというものである.僕はINON UCL-90というクローズアップレンズを使用しており,大体レンズ前8cmくらいまで寄って写真が撮れるイメージになる.
ただし,このクローズアップレンズには弱点がある.それは装着すると焦点があう被写体までの距離が極端に制限されてしまうことである.8cm前後のイメージであるが,それより数cm遠くても近くても焦点が合わなくなるようである.相手があまり逃げない生物であれば問題なく撮影できる(ウミウシとかコケギンポとか)が,すぐ逃げてしまう生物(僕の好きなハゼとか)は撮影が難しい.被写体に合わせて撮影距離の違うレンズを持ち込む必要があり,これもまた費用がそこそこかかる.だが,rx100シリーズでマクロ撮影したければこれらレンズがなければ残念な感じになってしまうので,マクロをしたいならばほぼ必須である.今はUCL-90しかもってないが,UCL-165やUCL-330などもう少し撮影距離の長いレンズが欲しいなと考えている.
rx100シリーズはセンサーサイズが普通のコンデジよりも大きい効果もあり,写真の色合いは結構キレイだと思う.特にmark5ではオートフォーカス性能も強化されておりAPS-Cサイズのミラーレス一眼と同等のフォーカス性能を持つ(とされている).クローズアップレンズを使用すればボケも作れるので,いい感じのマクロ撮影はできるかなと思う.海で写真撮影しているダイバーのほとんどはオリンパスTGシリーズを使用している印象であるが,もっとボケも出したいし,キレイな感じの色を出したいなと思うようならばいい選択肢かなと思う.マクロに関しては本当は一眼カメラなどより大型のカメラの方が,マクロレンズの使用で撮影はしやすいのだけれども,rx100シリーズには小さい・軽いという絶対的なメリットがある.ダイビングはただでさえ荷物が多いので,この小さい・軽いというのは大きな利点だなと感じる.
追記
一眼カメラをしばらく使ってからこのカメラを使ってみると,一眼カメラの性能の良さが際立つのを感じる.このカメラは陸上では確かに十分なオートフォーカス性能・暗所性能を持つが,とりわけ過酷な撮影環境である水中ではその性能は十分に発揮できないようだ.深さによっては暗さの問題でオートフォーカスは作動しないし,作動しても合焦までの時間がかかる.特にマクロ撮影における差は顕著である.一眼と比べてしまうとやっぱりコンデジレベルなのだなと感じる.しかし,この小さなシステムでそれなりのクオリティの写真が撮れるのは嬉しい.
軽さ・気軽さと性能とシステムにかかる費用,どれをとるか・・・.