昨夜は旅の疲れがどっと押し寄せ、気づけば深い眠りについていた。目を覚ますと、窓の外はほんのりと明るくなってきている。ベッドの中でぼんやりしていると、いつも通りに息子が6時30分に起床。就寝時間が遅くなったにもかかわらず、機嫌は上々だ。

 「よく寝たね。でも、もう少し寝ててもよかったのに…」

 隣で寝ぼけまなこの妻がぼそっとつぶやく。私も同じ気持ちだが、息子にとってはいつもと変わらぬ一日が始まるのだろう。

 今日はついに札幌雪まつりの見学だ。冬になるたびに訪れたいと思っていた場所に、ようやく足を運ぶことができる。朝食前に軽く身支度を整え、ホテルのレストランへ。昨日のチェックイン時、部屋の手違いがあり、入室後すぐに移動するハプニングがあったせいか、スタッフが会うたびに申し訳なさそうに頭を下げてくる。

「そんなに謝らなくてもいいのにね。」  

「うん、むしろ朝食無料にしてくれたら嬉しいけどね。」

 邪な期待を抱いたが、当然ながら朝食代はしっかり請求された。それでも、ビュッフェスタイルの朝食は北海道らしく、海鮮や濃厚な乳製品が並び、満足感は十分だ。

 腹を満たしたところで、いざ出発。雪まつりの会場は複数あるが、今回はもっとも有名な大通公園へ。地下鉄で2駅ほど移動し、地上に出ると一面の銀世界。息子は雪に慣れていないせいか、普段は走り回るのに今日はじっと立ち尽くしている。

 「どうした?寒くて動けないのか?」

 そう声をかけても、もじもじするばかり。仕方なく抱っこして会場を回ることにした。大きな雪像を一つひとつじっくりと眺めながら進む。白く輝く氷の芸術に圧倒される。

「すごいね、こんなに大きな雪像、どうやって作るんだろう?」  

「何日もかけて作るらしいよ。でも、暖かくなったら溶けちゃうんだよね。」

少しずつ雪に慣れてきたのか、息子はついに地面に降りて、自分の足で歩き出した。いや、むしろ走り回り始めた。事前に北海道出身の知人から「雪まつりは寒いし、転ぶよ」と忠告を受けていたため、息子にはノースフェイスのスノーブーツを新調していた。その効果は抜群で、転びそうな勢いで走ってもほとんど転ばない。妻も同様にノースフェイスのスノーブーツを購入していたため、一度も転ぶことはなかった。

 一方で、私はというと…

「ちょ、また転んだの?」  

「いやぁ、モンベルのトレッキングシューズ、雪道には勝てなかったよ…。」

 出費を惜しみ、内地で使っていた登山靴で挑んだ結果、何度も転倒。専用のギアの力を思い知る羽目になった。

 会場を存分に満喫し、時計を見るとちょうど昼時。観光客の多さから混雑を予想し、早めにランチを取ることにした。北海道は食の宝庫。何を食べようかと迷ったが、まずは寿司を堪能することに。Googleマップで調べ、「町のすし家 四季花まる」へ向かう。開店前の10時50分に到着するも、すでに4組が並んでいた。

「早く来てよかったね。」  

「うん、これなら開店と同時に入れそう。」

 案の定、5番目に並んでいたため、スムーズに入店。回転寿司ではなく、しっかりとした寿司屋の雰囲気に期待が高まる。新鮮な海の幸を存分に味わい、旅の序盤から感動の一皿に出会えた。

「ウッマ。これ、やばいね…。」  

「本当に美味しい。旅行の最初からこんなに美味しいもの食べて大丈夫かな?」

 沖縄からはるばるやってきた甲斐があったと心の底から思えるひとときだった。

 さて、次なる目的地は紋別。ここからはレンタカーでの長距離移動となる。雪道の運転スキルは習得済みだが、10年以上ぶりの本格的な雪道運転には少々不安があった。慎重を期して今回は4WD車を予約済み。札幌から旭川までは高速道路があるが、そこから先は一般道。凍結路面に警戒しながら進む。

「雪道の運転、やっぱり怖いよね。」  

「まぁね。でも、昔の感覚が戻ってきたから大丈夫そう。」

 最低気温-7℃の道中、凍結した路面にヒヤリとする場面もあったが、無事に紋別に到着。今夜の宿はオホーツク海を望む温泉宿だ。冷えた体を温泉で温め、夕食には予約していた毛ガニのコースを堪能。

「うわっ、毛ガニって本当に毛が生えているんだね。身がぎっしり詰まってる!」  

「これ、ビールに合いすぎる…!」

 長距離移動の疲れも、美味しいカニと温泉、そしてビールで一気に癒される。旅はまだ続くが、今日もまた思い出に残る一日となった。