昨日は長距離運転の疲れとビールの力により、早い時間に眠りについた。

 私の体内時計は朝6時30分にアラームを鳴らす律儀な友人だ。目を覚ますと、家族も自然と目を覚ましてくる。

「今日はよく眠れたね。」  
「そうね。この子も朝までぐっすりだったみたい。」  
「じゃあ、朝食の前に温泉に入りに行こうか。」  
「うん。」

 みんなで早朝の温泉を堪能した。雪国での早朝の露天風呂。冷たい空気の中、温かい湯に浸かり、ゆっくりと体を温める。なんという贅沢だろう。

 体がすっかり温まった後は朝食の時間。旅先での食事は、いつだって特別な楽しみの一つだ。

「今日の朝食も豪華だね。」  
「この子のお子様ランチも朝から豪華だよ!」

 お腹を満たし、ついに本日のメインイベント、流氷観光へ。

「いよいよ今日は流氷観光だね。」  
「うん。でも、昨日は悪天候で乗船予定のガリンコ号が欠航したみたいなんだ。」  
「今日は海況が改善しているといいけど……。」

 今のところ欠航の連絡は来ていないため、乗船予定の網走港へ向かうことにした。宿から港までは車で45分ほど。遅れないように早めに出発する。前日は降雪がなかったのか、道路は凍結しておらず、状態は良好だ。

「これなら予定よりも早く着きそうだ。」  
「待って!今ホームページを見ていたら、午前中のガリンコ号は欠航になったみたいだよ。」  
「そうなんだ……残念。でも、もうチェックアウトしちゃったし、行くところもないね。」

 はるばる沖縄から来たのに流氷を間近で見られないのは残念だが、落ち込んでいても仕方がない。旅は楽しんだ者勝ちだ。

 時間の都合上で観光の候補から外していたオホーツク流氷科学センターに目的地を変更。しかし、開館は10時。それまでの時間をどう過ごすか。

「あと1時間以上あるね。どうしよう?」  
「近くにイオンモールがあるから、そこに行こう!」

 観光地に来てまさかのイオン。だが、全国どこでもほぼ同じで、いつも通っていることもあり、なぜか安心感に包まれる。

 息子は車型のショッピングカートに乗って店内を回り、終始ニコニコしている。こういう時間もまた、旅の思い出だ。

 あっという間に時間が過ぎ、10時に合わせてオホーツク流氷科学センターへ。

 -20度体験コーナー、シャボン玉の冷凍実験、クリオネの展示など、充実した内容に夢中になる。流氷船には乗れなかったが、流氷についての知識をたくさん得ることができた。

「またいつかリベンジしたいね。」  
「うん、その時は絶対に流氷を間近で見よう。」

 そう誓いながら、次の目的地へと向かうのだった。

冬の澄んだ空気の中、私たち家族はレンタカーを走らせていた。沖縄の温暖な気候に慣れた私たちにとって、北海道の白銀の世界はまるで別世界だ。目的地は網走監獄博物館。時計を見ると、ちょうどお昼前だった。

「今はお昼前だから、道中でランチを食べると博物館には14時頃着けるかな」
「スケジュール通り、順調だね」 「ガリンコ号には乗れなかったけどね……」

流氷観光船に乗るのも楽しみにしていたが、運行状況の関係で今回は断念。しかし、家族旅行にハプニングはつきもの。気持ちを切り替え、ドライブを楽しむことにした。

道中、ガソリンの残量が半分以下になっていることに気づいた。
「そろそろ給油しようか」
「そうだね。雪道だし、早めに入れておいたほうが安心だね」
「以前、東北で雪の山道を走っていたとき、ガソリンがギリギリになって焦ったことがあるんだ」
「そんな状態になったら大変!早めに入れておこう」

妻は不安そうにこちらを見ている。あのときの冷や汗がよみがえったが、今は大丈夫。慎重に準備を整えながら進んだ。

そして、ようやく網走監獄博物館に到着。
「お疲れさま!」
「15年ぶりの再訪だけど、冬はまったく違う雰囲気だな」

雪が積もる博物館の敷地内に足を踏み入れる。地面は踏み固められた雪で、まるでスケートリンクのようにツルツルだ。

「うわっ!」 バランスを崩し、派手に転んでしまった。

「大丈夫!? 」
「大丈夫、大丈夫……」

そう言いながら立ち上がると、海外からの観光客グループが目に入った。彼らの足元には軽アイゼンがついている。
「なるほど、あれなら滑らないよな……」と妙に納得。

そんな中、息子は元気いっぱいに走り回っている。
「転びそうで転ばないね」
「子供は重心が低いから、意外と転ばないのかもね」

私も一緒になってはしゃいでみる。そして——

「うわっ!」 また転倒。そして、

バキッ……。

「……今の音、まさか……?」 慌てて確認すると、愛用の一眼レフカメラが雪の上に落ちていた。

「えっ、大丈夫!?」
「レンズは無事みたいだけど……撮影モードの文字盤が取れてる……」

動作には問題なさそうだったが、ショックは大きい。
「もう、はしゃぎすぎるからだよ」 妻が呆れたように言う。確かに、その通りだ。

博物館を後にし、今夜の宿がある北見へ向かう。すでに16時を回っており、気温も下がってきた。

「だいぶ冷えてきたね」
「そうだね。早くホテルに着きたい」

1時間ほど走り、北見に到着。ホテルにチェックインする前に回転寿司の「トリトン」で手早く夕食を済ませた。

「美味しかったね!」
「やっぱり北海道の海鮮は最高!」

ホテルにチェックインし、一息ついた後、駅前のデパート「Parabo」に行くことにした。

しかし——

「なんか、お店が片付け始めてない?」
「えっ、まだ6時過ぎなのに?」
「電気が消えてるお店もあるよ」

息子が店員さんに手を振る。

「こんばんは。もう閉店なの、ごめんねー」

まさかの18時30分閉店。

「そんなに早く閉まるの!? 会社帰りの人、買い物できないよね?」
「確かに……」

せっかく来たのに、入ってすぐ出ることに。

「仕方ないね。帰って温泉に入ろうか」
「うん、ゆっくり温まろう!」

温泉に浸かり、旅の疲れを癒す。北海道の冬は厳しいが、その分温泉の心地よさも格別だった。

「明日も早いし、そろそろ寝ようか」 「うん、明日はどんな景色が見られるかな?」

こうして、北海道の旅の一日が幕を閉じた。