水中カメラの入門として多くの人が選ぶのはオリンパスのTGシリーズであろう.2024年ではTG-7が最新モデルとなった.TGシリーズは多くの人が持っており,他の人とかぶりたくないとか,より大きなセンサーサイズのカメラを使いたいとか少しこだわりがある人が選ぶのが,SONYのRX100M5になるかなと思う.
水中カメラとしてダイビングで使うならばハウジングは必須である.TGシリーズは単体でも防水性能を有しておりシュノーケルや水遊び程度ならば可能だとされている.しかしダイビングで使用するならば性能が足りないためやはりハウジングが必要になる.RX100M5ならば防水性能はないためシュノーケルレベルであってもハウジングが必要だ.
RX100M5のハウジングの選択肢は現段階では2種類だと思う
1.SONY純正のアクリル性ハウジング
2.Nauticamのアルミ製ハウジング
以前は日本メーカーのSea and seaからもハウジングが出ていたがすでに販売は終了している.
二つのハウジングの最も大きな違いは価格である.前者は3万円程度,後者は現在17万円程度となりその差は非常に大きい.
道具を使用するならば個人的にはデザイン・かっこよさも重要だと考える.かっこよさはnauticamの圧勝だ(これは個人の考えによるところが大きい).またアルミ製のハウジングはある程度の期間使用していると,表面塗装が剥がれて色が変わる.その変化がエイジングみたいで自分色に育てていく楽しみがあると思う.
アルミ製の方が頑丈であるとされているが,実使用でアクリル製との違いはそれほどないと思う.アクリル製だからといって,レジャーダイビングでの限界とされる水深40mに行っても水没することはないし,その深度でカメラの操作ができなくなることはない.岩にぶつけたからといって損傷した経験もないし,外部からの刺激で水没する可能性も低いと思う.
アクリル製のメリットは軽量であることだ.RX100の純正ハウジングはカメラをいれた状態でもアクセサリーをつけなければプラス浮力のため手を離すと水面まで浮いていってしまうほどだ.撮影を行っていくとライトやストロボなどのアクセサリーはほぼ必ずつけるようになるので,水中ではちょうどよい重さとなる.
逆にアルミ製のデメリットは重いことだ.RX100M5はコンパクトデジカメのため比較的軽量だが,それでもハウジング単体で1kg程度の重量がある.
操作性に関しては明確な違いがある.nauticam性ではカメラの全操作に対応しており,水中でのマニュアル撮影も可能だ.純正ハウジングではダイヤルが一つしかないため,絞りかシャッター速度のどちらかしか変更する事はできない.よってマニュアル撮影はできない仕様となっている.
ただしコンパクトデジカメであるRX100M5で完全なマニュアル撮影が必要なのかは人によると思う.水中では窒素の影響なのか思考力が鈍る.普段は容易にできている操作が水中では中々うまくできない.個人的には水中でもマニュアル撮影するようなスキルのある人は一眼カメラを使ったらいいんじゃないかと思う.入門カメラ・コンパクトデジカメであるRX100M5にはAモードかSモードが使えれば十分じゃないだろうか.
最初は純正ハウジングを使用して撮影をしていても,ダイビングに熱中するほどに気になってくるのがアルミ製ハウジングである.僕自身も純正ハウジングを使用していたが,ある時期からアルミ製ハウジングが気になって仕方がなくなった.だけど17万円と非常に高価だ.「機能的には純正とほぼ一緒,撮れる写真は変わらない」と自らに言い聞かせ,何とか買わないように我慢してきた.
予算に余裕がある人はアルミ製を選んだ方が満足度が高いと思う.いつ生産終了になるか分からないので欲しいならば早く買うべきだ.すでに純正を持っているならば買い換える価値はないかな.RX100M6や7に関しては純正ハウジングでは使用できないため,nauticam性を検討するとよいだろう.
最初はカメラとハウジング単体で撮影していても,使用していく中で撮影クオリティを追求したくなってくる.ワイドコンバージョンレンズやクローズアップレンズを装着すると写真のクオリティは格段に向上するし,制限があるけれでも満足のいく写真を撮ることもできる.色の出方も綺麗だ.ほぼオートで撮影するTGシリーズと比べて,撮影難易度は上がるがよい写真がとれた時の満足度は比較にならない.このカメラは最初は綺麗に水中写真を撮ることは難しい.TGにしておけばよかったかなと後悔するかもしれない.だけどカメラの勉強をして撮影を重ねていく内に徐々に上達を実感する.趣味に対してある程度の苦労は惜しまないというならば最初の水中カメラとして非常に勧められる製品であると思う.
僕はこのカメラで水中写真に入門し,熱中してしまい一眼カメラ(APS-C),一眼レフカメラ(フルサイズ)とアップデートしてきた.すでにこのカメラは手元にはないが,今や陸上でもカメラでの撮影を楽しめているのは,このカメラで勉強したからだと思う.最初に選んだのがこのカメラでよかったな.